獣医の従姉妹の話
私の従姉妹は小さい頃から動物が好きで、大きくなったら獣医になりたいといっていました。その夢を追い続け、彼女はしっかり勉強して獣医学部を卒業し、免許を取得し、獣医になりました。犬や猫などペットの獣医になるのかと思いきや、彼女は馬獣医になりました。競走馬専門です。
馬主さんから預かり、厩務員さん、トレーナーさんが心を込めて世話をしている競走馬の健康を管理するのが彼女の仕事です。健康を損なわないよう管理し、病気や怪我の治療をします。「馬はね、頭がいいんだよ。注射は痛いから始めは嫌がるんだけど、そのうち注射してもらうと具合が悪いのが直るってわかって、進んでじっとしてくれるようになるの。でもね、注射が下手な先生が注射器持って近づくと嫌がって逃げようとするの。人間の患者と同じだね。」と彼女は言います。
他にも馬用サプリの話や、馬がなついてじゃれ付いてくる話など、現場で毎日馬と関わっているからこそ聞ける貴重な話を彼女は教えてくれます。馬にも個体差、というか性格があり、頭の切れる子もいれば馬鹿な子もいるし、人間にべったりな馬もいればそうでない馬もいて、みんなとてもかわいい、と彼女は言うのです。
しかし競走馬の獣医である以上、楽しいことばかりではありません。高齢になったり、骨折などの怪我をして走れなくなってしまった馬は、維持費がかかるため処分されます。怪我の程度や馬主さんの意向にも寄りますが、大抵、引退してテーマパークなどで子供を乗せたり馬車を引いて歩く馬になるか、屠殺するかのどちらかになります。彼女が言うには、桜肉を始め、コーンビーフやペットフードなどの加工された食用馬肉の多くは、元は競走馬だった馬の肉であるということです。私は食用には食用馬が飼育されているとばかり思っていたので、これは驚きでした。
従姉妹は言います。「馬ってね、結構大変なんだよね。気が向かないから練習サボるとかできないし。走れる間は人間がちやほやしてくれて待遇いいかもしれないけど、走れなくなったら食べられちゃうし。馬は好きだけど、私、もし生まれ変わるなら、馬だけは嫌だと思った。」
現役の馬獣医だけあって、なかなか説得力のあるコメントだと思いました。